「室戸海洋深層水」の可能性を広げる青年

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蜂谷潤さん(29歳)
室戸海洋深層水で、青のりやアワビ、トコブシを育てるという循環型のビジネスを立ち上げた蜂谷潤さん。

岡山県出身で、高知大学・農学部の栽培漁業学科で海藻類の養殖技術を学んでいた3年の時に、学生向けのビジネスプランコンテスト「キャンパスベンチャーグランプリ」に応募し、四国大会で最優秀賞を受賞し、全国大会でもテクノロジー部門大賞と文部科学大臣賞を受賞した。室戸では深海から湧き上がる海洋深層水をくみ上げ、地域の目玉にしてきたが、その海洋深層水を使った青のり栽培を高知大学が技術指導していて、蜂谷さんはフィールドワークで室戸に通ううち、指導教授に相談し、これをビジネス化するプランを作って応募した。そして、高知県の東南端、室戸岬の海に魅せられて単身移住し、地域起こしに取り組んでいる。
青のりの栽培の条件は、清らかで冷たい水が不可欠。海洋深層水は室戸岬沖の水深340メートルでくみ上げられており、その海水は、光合成に必要な太陽光が届かないため、ミネラル分が豊富で、水温も年間を通じて低温で一定しているのが特徴で化学物質などによる汚染もほとんどなく、しかも、養殖は陸上の水槽で行うため、天候にも左右されずに収穫できるのである。

 

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さらに蜂谷さんは、青のりの生育で海水中の栄養分が吸収されると海水が浄化されるため、それを貝類の養殖に使うことができると目を付け、この水で、アワビやトコブシを養殖するプランを作ったのだ。 
その後、大学院に籍を置きながら、室戸でのビジネスが始まり、2013年には一般社団法人「うみ路」を設立。青のりの養殖事業に乗り出すかたわら、室戸の魚などを使った商品開発に乗り出し「むろっと」http://www.murotto.net/ というサイトも立ち上げ、通信販売にも乗り出した。

 

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「むろっと」の人気商品になった「コンフィ」は、室戸岬の近海で定置網漁により水揚されるマルソウダを、水揚げ後すぐに魚を受け取り、鮮度のいい状態で地域のお母さんと、一つずつ丁寧に捌き、そして、海洋深層水につけこみ塩味をほどよくつけた後、くせの少ない米油と、袋に詰め真空梱包をおこなった後、加熱します。そのため、旨みは逃げることなく、袋の中へ閉じ込められています。マルソウダは、旨みの多い魚のため一般的には、宗田節の原料として利用されており、鮮度低下が早く、普段は鮮魚として市場に出回ることがなく、パスタに、サラダに、お酒のツマミに、旨み溢れる風味が、その珍しさも手伝って人気である。

 もちろん、青のりの加工品も看板商品!青のりは四万十川の河口産が有名だが、水温の上昇や水質の悪化で生産量が激減。最盛期の1980年代には年間62トンだった収穫量が今は2トンになっていて、青のりの価格は上昇し、今では1キロ1万円という高値が付くので、海洋深層水の養殖青のりの価格が高くても、何とか戦えるそうである。

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室戸のトコブシも
1999年に32トン獲れていたものが、今は8トンで、小売り段階での価格が高い。つまり、養殖する価値がある訳である。

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 蜂谷さんの起業によって室戸にも少しずつ仕事が生まれていて、うみ路ではパートを含む10人を雇用しており、また、市の施設である「室戸世界ジオパークセンター」にあるカフェ「ジオカフェ」と土産物店「ジオショップ」の運営を受託している。

 

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前田和子さん(左)と蜂谷さん

 

室戸市は市とは言っても人口はわずか15000人で、全国の市の中でも下から5番目。おまけに、高知市内から車で2時間はかかり、人口減少に苦しんでいるのは言うまでもなく、そんな中で、室戸での蜂谷さんの取り組みが、活性化の起爆剤になると期待が寄せられている。

WEDGE Infinity」より転載

 

 
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