省エネ大賞で資源エネルギー庁長官賞 室戸海洋深層水(高知県)と今後の課題

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写真は釜からの蒸気を圧縮して再び釜に送り込む製塩装置の電気式ヒートポンプ。
(室戸市室戸岬町の室戸海洋深層水=四国電力提供)

 

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地域連携機構 ものづくり先端技術研究室(室長:松本 泰典 准教授)は、室戸海洋深層水の製塩システムの開発にあたり、大学の知見を活かした逆浸透膜と真空濃縮を併用した技術(特許第5062728号)を用いて、省エネルギー化に大きく貢献。特に、海洋深層水の核となる、豊富なミネラル分を損なうことなく、蒸気釜の伝熱係数の向上および廃熱の再利用による製塩時間の短縮により、大幅なエネルギー使用量の削減を達成しました。

 

製塩エネルギー93%を削減  四国電力、高知工科大学が協力

室戸海洋深層水は深層水を煮詰め、年間約300トンの塩やにがりを製造しているが、新しい方法は高知工科大学と取得した特許などを基に研究を続け、2015年9月に完成した。

四国電力、室戸海洋深層水株式会社、高知工科大学および一般社団法人日本エレクトロヒーセンターと共同で実施した「塩製造工場における廃熱等を活用した省エネルギーの取り組」に関して、塩製造工場での海水濃縮工程において、化石燃料を使用した蒸気釜

に代わり、これまで大気に捨てていた熱を活用した電気ヒートポンプ式濃縮装置の導入と逆透膜の多重化などにより、エネルギー使用量を93%削減し、その優れた省エネルギー性どが高く評価され、2017年1月23日、一般財団法人省エネルギーセンター主催の「2016年度省エネ大賞」の省エネ事例部門で資源エネルギー庁長官賞を受賞した。

 

海洋深層水産業テコ入れする高知県室戸市

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2017/1/17 6 日本経済新聞 電子版 を要約

 

捕鯨や遠洋漁業で栄えた高知県室戸市は、200カイリ漁業水域の設定などで水産業が衰退した。高知市から車で2時間かかるなど交通アクセスの不便さもあり、人口はピーク時の半分以下に減少した。活性化へ独特の地形や海洋深層水といった地域の強みをどう観光や産業の振興につなげるか?問題は多い。
小松幹侍市長は「ピーク時に128隻あった遠洋漁船は今や7隻に減ったが、定置網漁やキンメダイ漁は頑張っており、沿岸・沖合漁業振興は観光面でも不可欠です。ナスなどの施設園芸も担い手の減少幅は小さい。農水産業は引き続き地域の基幹産業であり、海洋深層水産業もテコ入れが必要。飲料用は飽和状態なので、新たな分野での成長が必要です。例えば養殖。スジアオノリやアワビ、トコブシの養殖に使うと、病気が少なくなるという特性を生かしたい。高知大学などと深層水の健康効果について研究しており、その成果を生かしていきたい。」との事。

 

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小松幹侍市長は2011年に認定された世界ジオパークの効果について

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15年4月に開館した室戸世界ジオパークセンターは、1年目の入館者数が10万人を超えました。当初は7万人が目標だったのです。交流人口も増えており認定効果は非常に大きいと思います。今後もイベントや情報発信を途切れず続けていきたいです。今年は廃校を利用したミニ水族館も開業する予定です。閉鎖した宿泊施設を再開する動きも出てきました。飲食の充実などもして地域活性をしていきたいです。昨年秋に『室戸びと、進む。』というキャッチコピーで、市民にスポットライトを当てた49種類のポスターを作製しました。」

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「高知海洋深層水企業クラブ」の竹中幸市会長=クリップ提供

室戸ジオパーク推進協議会は、地元住民の人生をストーリーとして紡ぐことで地域ブランドのイメージを確立し、誘客と特産品販売に結びつける室戸市地域創生プロジェクト「室戸びと、進む。」を始めました。室戸岬の地殻変動が観察できるジオパークでありながら、あえて景色を前面に出さず、市井の人たちにスポットを当て、第1弾として、地元で働く人々を"素人モデル"にしたポスター49枚を作り、市内各地に張り出しました。

室戸と海洋深層水の活性化に期待したいと思います。

 

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