海の深層水循環の歴史事始め

2000mより深い北太平洋の深層水循環変動を過去1万年余にわたって、国立環境研究所の内田昌男主任研究員らが海底堆積物の有孔虫化石の年代分析で確かめ、ネイチャーグループ発行のサイエンティフィックレポート誌(2月17日)に発表した。
内田さんらは、海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が2005年に下北半島沖、水深1179mで採取した海底堆積物コアを分析した。堆積物コアを厚さ1-2cmに分割し、堆積物中から浮遊性有孔虫と底生有孔虫の化石を取り出し、放射性炭素で年代を測定した。1万2千年~500年前にかけて、千年スケールの時間分解能で深層水循環を復元した。
この間、地球の気候が比較的安定していたとみられているが、北太平洋の深層水は意外にも大きく変動していた。特に7500-6000年前の縄文時代早期には、南半球の気候変動が引き金となって、北太平洋の中・深層水循環が活発になっていたことが浮かび上がった。「南極海周辺における大気循環が強まり、南大洋の深層水形成と連動する形で、深層水循環の下流に位置する北太平洋の深層水循環も強化された」と、研究グループはみている。
深層水は北大西洋高緯度と南極海によって形成され、最大約2000年かけて北太平洋に到達する。大量の熱と二酸化炭素を運ぶ地球規模の「ベルトコンベア」で、地球の気候システムの調節弁として重要な役割を果たしている。1万年前からの深層水循環変動に関する知見は少なく、北太平洋における報告は初めてという。
内田さんは「縄文時代に深層水循環が活発になったことが分かったのは重要な発見だと思う。深層水循環と気候変動のダイナミックな関係を解明する手掛かりになる。500年前から現代にかけての深層水循環も詳しく調べたい」と話している。

 

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