≪海洋深層水を活用したスケートリンクが誕生!≫
2018年に韓国の平昌(ピョンチャン)で開催予定の第23回冬季オリンピック。
この冬季オリンピックのスケート場に、どうやら「海洋深層水」が大いに活用される模様です。
その名も、「グリーンエネルギー・スケートリンク」。
このスケート場にどうやって海洋深層水が活用されるのかでしょうか?
昨年12月に、韓国の国土海洋部より「平昌冬季五輪をエネルギー削減および低炭素グリーン五輪とするために、江原通路江陵に建設される平昌五輪スピードスケート競技場の冷・暖房などに海洋深層水を利用する方針」との発表がありました。この「エネルギー削減および低炭素グリーン五輪とするため」に、海洋深層水は活用されそうなのです。
海洋深層水はミネラルが豊富で人間の体に良い、というだけが特長ではないことは、当サイトの数々の記事によりお分かりのことでしょう。この事例では、海洋深層水のもう一つの大きな特長である、「低温安定性」が利用されているのです。
≪スケートリンクを凍らせるのに利用される海洋深層水≫
平昌冬季オリンピックでは、この「低温安定性」が、まず単純に「冷たい」ことが利用されます。
江陵沖の水深200メートルの海底からくみ上げられる海洋深層水は、水深200メートルから水深50メートルまでの海底にパイプが設置され、水深50メートルからは海底を1.5メートル程掘り起こして埋設されるそう。陸地においては、地下1.5メートルにパイプが埋め込まれ、海から4キロ内陸に入った地点に建設される、スケートリンクの地下まで、そのパイプによって繋がれます。
そうして太陽光が一切届かない水深200メートルの海底から、水温が常に摂氏2度以下に保たれる海洋深層水をくみ上げ、スケートリンクの地下に設置された冷却システムが、そのくみ上げられた海洋深層水をマイナス15度の不凍液に変え、その冷気をアイスリンクの氷面の下に敷かれたコイルを通じて伝達し、氷面を凍らせる仕組みとなるそうです。
海洋深層水はもともと摂氏2度と温度が低いため、一般用水よりもはるかに「低コスト」で冷気を吹き付けることが可能だそうです。
≪冷暖房として客席などに利用される海洋深層水≫
そして、氷面を凍らせるために使用した水は、観衆や選手にとって快適な室内温度を保つために、冷暖房としても利用されるそうです。
では、その海洋深層水を利用した冷暖房とは、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。先のスケートリンクを凍らせるための冷却システムを経た海洋深層水は、摂氏7~8度くらいまで上昇しますが、この水を再びスケートリンクの地下にアル熱ポンプに供給して温水を作り上げた後、ラジエーターを通じて競技場内に温風として送り込まれるということです。
≪発電にも利用される海洋深層水≫
さらに驚くべきことに、海洋深層水は「発電」にも利用されると言います。韓国政府はスケートリンクと共に、海岸とスケートリンクの中間地点に海水の温度差を利用した「海水温度差発電所」を建設することも決定したと発表しています。
≪コスト削減効果大!の海洋深層水≫
こうしたシステムでスケートリンクを運営するためには、1日平均で約6300トンの海洋深層水をくみ上げなければならないそうです。しかし、この海洋深層水を利用したスケートリンクの運営コストは、冷凍機やボイラーなどを利用してスケートリンクを運営する現行システムに比べ、年間約8億1000万ウォン(約5440万円)のコスト削減効果が見込まれると言われています。
これだけの大規模な活用方法を持ち合わせていながら、地球環境に優しく、しかもコスト削減効果もある「海洋深層水」は、まさに自然の賜物と言えるのではないでしょうか。
思わず、「万歳、我らが海洋深層水!」と叫びたくなりますね。