室戸海洋深層水から調製したミネラル比の異なる高ミネラル水によるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖抑制と運動性抑制に及ぼす影響

ピロリ菌増殖抑制!室戸海洋深層水から調製したミネラル比の異なる高ミネラル水によるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖抑制と運動性抑制に及ぼす影響

室戸海洋深層水※1から調製したミネラル比の異なる高ミネラル水による、生体外でのヘリコバクター・ピロリ菌の増殖抑制と運動性抑制に及ぼす影響についての検討が赤穂化成株式会社と高知大学医学部との共同で行われ、第53回日本臨床検査医学会で発表されました。
 ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)は人の胃内に定着・感染し、上部消化管疾患をはじめとした様々な疾患へ関与することが報告されています。現在、ピロリ菌の除菌にはプロトンポンプ阻害剤と2種類の抗生物質の3剤療法により実施されていますが、耐性菌の出現や副作用などによって除菌不成功例が増加しています。これまで赤穂化成株式会社は、高知大学医学部と共同で以下の発表を行いました。
①室戸海洋深層水100%飲料(硬度1000)によるピロリ菌の増殖抑制に及ぼす影響※2
②室戸海洋深層水から調製した5種類の高ミネラル水による、ピロリ菌の増殖抑制と運動性阻害に及ぼす影響。※3
③室戸海洋深層水から調製した硬度※4の異なる水によるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖抑制と運動性抑制に及ぼす影響※5
 今回の試験では、臨床分離株53株のピロリ菌に対する、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)比が異なる海洋深層水の増殖抑制と運動性抑制効果について検討が行われました。試験には海洋深層水より調製したミネラル比の異なる高ミネラル水(硬度2000相当)4種類が用いられ、対照にはミリQ水を用いて増殖抑制試験ならびに運動性抑制試験が実施されました。
 増殖抑制試験ではブルセラブロス(馬血清10%添加)寒天培地で2日間培養したピロリ菌をブルセラブロス培養液に懸濁し、この懸濁液を適宜希釈し、試験水または対照水を含むブルセラブロス寒天培地に10μLずつ滴下した後、37℃、CO210%の環境下で3日間培養した後の生菌数(CFU)を測定されました。
 また、運動性抑制試験ではブルセラブロス寒天培地で2日間培養したピロリ菌を試験水または対照水を含むブルセラブロス軟寒天培地に接種。37℃、CO210%の環境下で7日間培養した後、コロニーの直径が測定されました。
結果、対照における生菌数及びコロニーの直径を100%として、試験水のピロリ菌増殖抑制効果及び運動性抑制効果を評価したところ、試験水および菌株により増殖抑制・運動性抑制効果に差があることが明らかとなり、ミネラルに対する感受性が菌によって異なることが示されました。

※1:室戸海洋深層水
 一般的に海洋深層水とは、太陽の光さえ届かない水深200m以深の水温が急に冷たくなっている層にある海水のことをいいます。その海水は陸水や大気由来の化学物質にさらされる機会が少ないため、きわめて清浄です。「室戸海洋深層水」は、高知県室戸沖の水深344mから汲み上げられた水をいいます。
 今回の試験で用いた試験水Cは、市販されている室戸海洋深層水100%飲料と同じMg、Ca比で、硬度が異なり2000です。
※2:2005年9月30日「日本臨床検査自動化学会第37回大会」で発表
※3:2006年5月24日「106th General Meeting[American Society For Microbiology]」で発表
※4:硬度
硬度=(Ca量(mg/L)×2.5)+(Mg量(mg/L)×4)
※5:2006年10月13日「日本臨床検査自動化学会第38回大会」で発表

■研究員

竹内啓晃、杉浦哲朗   (高知大学医学部病態情報診断学教室)
山本悦子、安川岳志、中川光司、池上良成 (赤穂化成株式会社)

■研究内容

テーマ 室戸海洋深層水から調製したミネラル比の異なる高ミネラル水による
ヘリコバクター・ピロリ菌の増殖抑制と運動性抑制に及ぼす影響

研究期間   2006年4月~2006年8月
試験水および使用菌株
[試験水] 室戸海洋深層水から調製した高ミネラル水(硬度2000)
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[対照水] ミリQ水

[使用菌株] 臨床分離株を中心に約53株
KMTシリーズ:高知大学医学部附属病院臨床分離株
PYIシリーズ:赤穂市民病院臨床分離株
NYシリーズ:抗生物質(メトロニダゾールおよびクラリスロマイシン)耐性株(日本株)
NTCC11637:臨床分離株(米国株)
26695株:遺伝子レベルまでよく解析されている臨床分離株(欧州株)
HPK5:臨床分離株(日本株)
HPKT510:遺伝子組み換えにて作製したHPK5のcdrA遺伝子(細胞分裂関連遺伝子)破壊株

■増殖抑制試験方法

 ブルセラブロス寒天培地(馬血清10%添加)より充分に生育したピロリ菌を集菌し、ブルセラブロス培養液に懸濁しO.D.600=0.4になるように調整後、この溶液を104、105、106倍に希釈。試験水または対照水を含む寒天培地に希釈した菌懸濁液を10μlずつ滴下後、37℃、CO2  10%環境下で3日間培養し、生菌数(CFU)を測定。

■運動性抑制試験方法

  ブルセラブロス寒天培地(馬血清10%添加)より充分に生育したピロリ菌を試験水または対照水を含む軟寒天培地に接種。37℃、CO2 10%環境下で7日間培養し、コロニーの直径を測定。

■評価方法

 対照における生菌数、コロニーの直径を100%として、試験水の増殖抑制効果と運動性抑制効果を判定。試験は3回以上行い、対照に比して80%より小さい値を示したものを増殖抑制効果・運動性抑制効果ありと判定。複数回の試験における増殖抑制効果・運動性抑制効果の割合(%)で評価した。

増殖・運動性抑制効果の割合(%)=効果のあった試験回数/総試験回数

■試験結果

1)菌株の種類及びMg、Caの配合量の違いにより増殖抑制効果・運動性抑制効果に差が見られた。
2)マグネシウム添加量の多いDの組成の水が最も多くの菌株に対して増殖抑制効果を示した。
3)運動性抑制試験においては、カルシウム添加量の多いA及びBの組成の水で、より高い運動性抑制効果が得られた。

■増殖抑制・運動性抑制_試験結果

100%:★、75~99%:◎、50~74%:○で評価。      
              
●評価表
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□資料提供:赤穂化成株式会社
・発表日:2006年11月10日
・発表会名:第53回日本臨床検査医学会
・発表者:赤穂化成株式会社

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