日本各地の海洋深層水

日本ではどこで取れるの?

日本国内の取水施設は、北は北海道から、南は鹿児島、沖縄まで、全国各地に存在します。 それぞれの取水地には特色があり、海洋深層水の取水や研究・開発など、各地でさまざまな取り組みがされています。

 
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日本で初めて作られた取水地は、高知県室戸市の室戸沖
1989年に、日本で初めての陸上型の深層水取水施設が室戸市に開設されました。それに続いて、日本各地でも取水施設が建てられ、海洋深層水の取水が行われるようになりました。

この高知県室戸市に取水施設が設置された背景としては、1985年に当時の科学技術庁(現 文部科学省)が進めていたアクアマリン計画「海洋深層水資源の有効利用技術に関する研究」において、高知県室戸岬沖がモデル海域に指定されたことにありました。以後高知県海洋深層水研究所では海洋深層水研究や利活用の先駆けとして、さまざまな取り組みが行われています。
「日本初の海洋深層水取水施設は室戸!」のページへ

取水施設の立地条件とは?
海洋深層水の取水施設は、どのような場所が適しているのでしょうか。整備・輸送コスト面や利用しやすさから、その立地条件は次の3点が考えられています。

・陸地から急激に深くなる海底地形である
・企業や一般人が取水施設を利用しやすい都市部が後背地としてある
・深層水製品の消費地への交通インフラが整っている

陸地から急激に深くなる海底地形であれば、取水管の設置距離が短くなり、初期投資コストの面で有利になります。よって、取水地は島や半島の先端に設置されることが多くなっています。新潟県佐渡島、沖縄県久米島、鹿児島県甑島などの島や、高知県室戸、神奈川県三浦、北海道羅臼などの半島の先端などがその好例です。

また、その取水施設を利用する企業や一般人にとって利便性の良い都市部が後背地としてあるかどうかも重要な立地条件となります。
もちろん製造された深層水製品を消費地へ運ぶ輸送コストの面からも、交通インフラへのアクセスが良好である必要があります。
一部例外もありますが、これらの条件を満たした地に、取水施設が設置されています。

国内の代表的な取水地の特色
取水施設の立地によって、深層水の利用目的もそれぞれ異なってきます。
ここでは代表的な日本の取水地や取水施設の特色について見てみましょう。
高知県室戸市の取水地については「日本初の海洋深層水取水施設は室戸!」のページを参照ください)

●北海道羅臼町 知床らうす深層水取水施設(知床らうす海洋深層水)
流氷のミネラルが溶けたこの海域でしか取水できない海洋深層水で、深層塩や羅臼の漁港で水揚げされる旬の新鮮鮭を使ったスモークサーモン、知床らうす海洋深層水100%で作られた自然塩と寒天を配合したヘルシーアイス「知床塩アイス」など独自の商品開発を行っています。

●北海道八雲町 熊石海洋深層水供給施設(熊石海洋深層水)
熊石海洋深層水は、日本海の水深約300m以深に存在する「日本海固有水」です。日本海固有水とは、日本海北西部の大陸に近い海域において、冬に強い冷却を受けた表層水が沈降することで形成される水塊のことです。太平洋側の海洋深層水に比べて水温が低く安定しており、酸素の豊富な海面の海水が沈み込んだことにより、溶存酸素量が北太平洋の海水と比べて多く含まれているという特徴があります。

熊石海洋深層水は、エゾアワビの陸上養殖や、魚介類の鮮度保持や洗浄用として、農業、加工業などで利用されています。エゾアワビの養殖については、夏場の海水温の高くなる時期に、海洋深層水の低温性が特に有効活用されています。


●新潟県佐渡市佐渡海洋深層水分水施設(佐渡海洋深層水)
佐渡海峡で取水している日本海固有水です。なんばんえびの畜養が特に有名で、他にも海洋深層水を利用した露天風呂を備えた宿泊施設である「寺泊きんぱちの湯」など、多様な利活用が行われています。



●富山県入善町 入善海洋深層水活用施設(入善海洋深層水)
●富山県滑川市 滑川海洋深層水分水施設アクアポケット(滑川海洋深層水)
富山県の海洋深層水の取水は、1995年に、富山県と株式会社マリノフォーラム21によって、 県水産試験場 (滑川市)の構内に深層水利用研究施設が整備されたのがはじまりで、日本海側では初、陸上施設による事業規模での深層水利用では、高知県室戸市に次いで2番目となります。

水産試験場内に深層水利用研究施設を整備するなど、県の研究機関が水産、食品、健康増進といった幅広い分野で多様な研究を進めています。

富山湾の海水は「沿岸表層水」、「対馬暖流系水」、「日本海固有水」と三層になっており、入善海洋深層水と滑川海洋深層水は300m以深の「日本海固有水」から取水されています。

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富山湾の水塊構造(c)富山県入善町役場より
http://www3.town.nyuzen.toyama.jp/
deepsea/about/nyuzen.htm

富山湾の日本海固有水は、一年を通じて2℃前後の水温を保ち、太平洋側に比べても非常に低温であることや、酵素が多く溶け込んでいること、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分も豊富で、栄養源が表層水の約10倍であることなど、多くの特徴があります。

●東京都伊豆大島町 伊豆大島海洋深層水取水施設(伊豆大島海洋深層水)
伊豆大島では、相模湾トラフの2,500m以深から湧昇として湧き上がってくる深層水が取水されています。よって、ポンプなどの汲み上げエネルギーが必要ないという好条件に恵まれています。

●静岡県焼津市 駿河湾深層水取水供給施設(駿河湾海洋深層水)
駿河湾にはそれぞれ起源の異なる「黒潮系深層水」「亜寒帯系深層水」「太平洋深層水」の3種類の海洋深層水が存在しているといわれています。このうち、静岡県では、水深397m以深の「黒潮系深層水」と、水深687m以深の「亜寒帯系深層水」の2層から取水しており、これらを総称して「駿河湾深層水」と呼んでいます。

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駿河湾の3種の深層水 (c)駿河湾深層水利用者協議会より
http://www.shizuoka-kakouren.jp/surugadsw/gaiyou.html

●沖縄県久米島町 沖縄県海洋深層水研究所(久米島海洋深層水)
久米島の沖縄県海洋深層水研究所では、日量13,000トンもの海洋深層水が取水されています。国内全取水量の約28%を占めており、日本最大の取水量を誇ります。これまで、魚介類の養殖研究、農作物の養液栽培などを目指して研究開発に取り組んできました。

中でも、その低温安定性を利用したクルマエビやエゾアワビ、アサクサノリ、海ぶどう、ヒラメなどの魚介類の養殖や飼育などは特に有名です。

また、久米島の海洋は太陽エネルギーが豊富に蓄えられることから、表層水の温度と深層水の温度差が20℃以上あります。このことから、海洋温度差発電に適した地域とされ、2013年より本格的な海洋深層水温度差発電の実証実験がスタートしました。海洋温度差発電システムの実用化に向けて、発電コスト低減に向けた実証試験などが行われています。

このように、日本の各取水地では、それぞれの地特有の海洋深層水に関するさまざまな研究・開発が行われています。今後もさらに発展していくと予想される、各地の海洋深層水に対する取り組みからは目が離せません。

参考:
http://deepsea-shop.jp/about_dsw.html
http://www.organic-plaza.com/04-S.html
http://dsw.ti-da.net/e478091.html

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