室戸市、海洋深層水テコ入れ  規制緩和で飲食・農業開拓

やはり、素晴らしい水だった室戸海洋深層水

高知県では、厚生労働省の戦略産業雇用創造プロジェクトを活用して、平成26年度から平成28年度の間、高知海洋深層水企業クラブの協力を得ながら、高知大学への委託により室戸海洋深層水の飲用による健康面での効果を検証し、その検証結果を商品開発や商品販売戦略に生かして関連産業での雇用増加を図るべく研究に取り組んだ。

<検証されたこと>

(1)腸管免疫への効果の検証
 室戸市民を対象とした室戸海洋深層水の飲用試験を実施しました。
 ヒトは毎日の食事摂取などにより、同時に膨大な数の細菌等も摂取しています。これら異物の体内侵入を防ぐために働く免疫細胞は、その7割が腸管に集中しています。免疫細胞は腸内細菌叢(そう)※の刺激を受けることによって活性化するなど、健康の維持に重要な役割を果たしています。また、腸内細菌叢の乱れが様々な症状や疾患に関与していることも分かってきています。
 室戸海洋深層水の飲用が腸管免疫に与える効果を検証することで、健康づくりに役立てる可能性を探りました。

※腸内細菌叢→腸内で一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な腸内細菌の集まり

(2)室戸海洋深層水の物質特性と免疫機能効果の検証
 国内では、様々な企業が海洋深層水を使った飲料水を製造しています。採水地や製造方法の違う海洋深層水飲料のミネラル含有量を測定するとともに、動物にミネラルバランスの違う海洋深層水飲料を投与して免疫機能の状態を検証しました。
 また、科学的見地から海洋深層水飲料の特色を明らかにして、商品ごとの販売戦略作りの可能性を探りました。

(3)卵巣がん治療後の免疫パラメーター変動と再発率の関連性の検証
 がんの発病、再発にはヒトの様々な免疫応答が関わっていると考えられています。卵巣がん治療後の患者への海洋深層水の飲用試験を実施して、体内の免疫の変化を検証し、がん再発の抑制も含めた免疫機能の活性化方法の確立について可能性を探った。

<研究結果>

 3年間の研究の結果、室戸海洋深層水には、腸内環境の改善や抗酸化作用等のヒトの健康に関わるとされる、「短鎖脂肪酸」や「エクオール」の産生量の増加等の効果があることが確認された。

残念ながら海洋深層水事業は赤字

しかしながら、高知県室戸市はこの海洋深層水事業は赤字が続いており、海洋深層水の給水・販売事業を改革することとなった。

アクアファームが開設した2000年、栄養価の高い「恵みの水」は全国でブームとなり、県内外から利用企業が一時120社以上に増えた。市の海洋深層水特別会計は2000年度の実質収支額が1300万円強の黒字。だがブームが一段落し消費が伸び悩み始めると収支は徐々に悪化した。08年度から赤字に転落し、給水基金残高が枯渇した16年度以降は赤字分を一般会計から繰り入れるなど厳しい経営が続く。

市の担当者は「経費削減などで18年度の赤字額は620万円と17年度比ほぼ半減になった。規制緩和と官民協働で早期の赤字脱却を目指す」と話している。

今後の改革

深層水を買った事業者が「室戸海洋深層水使用」と商品やサービスに表示・告知できるようにする許認可を簡素化。これにより水の販路として未開拓だった飲食店と農業向けを開拓する。規制緩和を受け高知市内の料理店が深層水を使った新メニューを開発した。販路を広げ赤字脱却を目指す。

室戸沖合の水深200メートルより深いところにある深層水をくみ上げて給水・販売する市の施設は「室戸海洋深層水アクアファーム」といい、1日4000トンくみ上げる。市は原水1トンあたり地域住民に583円、市外には702円で販売する。

市は規制緩和で表示の使い勝手を良くして、主力顧客である飲料や食品といったメーカーに加え飲食店や農業を新たな販路にする。市外で高知県内のタマネギやかんきつ類を生産する農園からも給水の打診があった。ふるさと納税の返礼品でも深層水使用の農産物の取り扱いを増やす。事業者への水の宅配も可能かどうか検討する。

飲食店の展開】

心耀堂が20日から提供する「室戸海洋深層水 美のコース」(高知市内のさざ波比島本店)を訪問する室戸市長

写真のさざ波比島本店の他、高知市内で高級飲食店2店を運営する心耀堂(高知市)は20日から2店で「室戸海洋深層水 美のコース」というコース料理を提供する。同日までにアクアファームから定期的に原水を購入するため市に給水の許可を届け出る。この手続きだけで店のメニューに「室戸海洋深層水」と明記できるようになる。

従来、給水の許可を経た事業者が食品や飲料水などにミネラル豊富なことを消費者にアピールできる「室戸海洋深層水使用」の表示をしたい場合、市や保健所職員からなる審査会で許可を得る必要があった。市は6月、2段階の手続きをやめて給水の許可だけで表示できるよう条例を改正した。

 ※高知県庁HP 日本経済新聞電子版 参照

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