血圧降下について(1)

テーマ:海洋深層水より調整した高ミネラル水の遺伝性高コレステロール血症(KHC)ウサギにおける血圧上昇抑制改善作用 


海洋深層水から調整した高ミネラル水には、動脈硬化やそれと同時に見られる血圧上昇を抑制する可能性があることを福島県立医科大学と赤穂化成株式会社が確認し、その結果は仙台で行われた「第58回日本栄養・食糧学会」で報告されました。
 近年、動脈硬化や高血圧など生活習慣病の予防には、食生活の改善のほか、飲料水の選択にも関心が高まり、長寿地域の飲料水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれていると言われています。
研究では、質の高いミネラル源の海洋深層水から調整した飲料水を用い、高コレステロール血症と動脈硬化を自然発生するKurosawa and Kusanagi-Hypercholesterolemic(KHC)ウサギに飲用させた場合の、血圧上昇と動脈硬化抑制効果について調べられています。
 6ヶ月齢の雄性KHCウサギを、血清総コレステロール濃度の平均値と標準偏差がほぼ等しくなるように試験群と対照群との2群に分け、24週間に渡って試験群には高ミネラル水を、対照群には水道水を自由に摂取させました。高ミネラル水は、海洋深層水から調整した室戸海洋深層水100%飲料(硬度1000)を、水道水は、福島市の水道水が使用されました。
 その結果、試験群の方が、血清総コレステロール、LDL-コレステロールなど、動脈硬化の危険性を示す成分濃度の減少幅が対照群より大きい傾向にあって、血圧も有意に低い値を示しました。また、血漿レニン活性※1、アンギオテンシン変換酵素活性※2など、血圧上昇の要因となる酵素濃度の減少幅は、試験群の方が大きい傾向にありました。さらに、大動脈病変面積率は、試験群の方が小さい結果が得られています。
 これらの結果から、KHCウサギにおいて、海洋深層水から調整した高ミネラル水の飲用によって、血圧上昇の抑制ならびに、血清脂質濃度と大動脈硬化病変の改善傾向が認められました。

【研究概要】

■研究機関

  福島県立医科大学
 赤穂化成株式会社

■研究内容

テーマ 海洋深層水から調整した高ミネラル水の遺伝性高コレステロール血症
(KHC)ウサギにおける血圧上昇抑制作用
研究時期 2002年10月~2003月3日 
サンプル 6ヶ月齢の雄性KHCウサギ 22匹 
  (試験群=111匹、対照群=11匹)
 使用飲料水 試験水:「室戸海洋深層水100%飲料(硬度1000)」
  対照水:滅菌水道水(福島市水道局給水)8.jpg

■方法

雄性KHCを、血清総コレステロール濃度の平均値と標準偏差がほぼ等しくなるように試験群と対照群の2群に分ける。試験群には、海洋深層水から調整した高ミネラル水「室戸海洋深層水100%飲料(硬度1000)」を、対照群には、水道水を自由摂取させる。飼料は、市販のウサギ用固形飼料を1日100g給餌する。

■検査内容

4週間ごとに体重、飼料摂取量、飲水量、血清脂質値を測定
試験終了後、ペントバルビタール麻酔下で血圧と上行大動脈血流量を同時に計測
飲水試験開始前と終了後に、血漿ホルモン値を測定
摘出大動脈における病変面積率を画像解析装置で測定

■研究結果

検査内容①→体重及び飲水量は、試験群と対照群との間で有意差は認められなかった。(図1)
   血清総コレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライド※3及び過酸化脂質濃度は、両群ともに試験終了後には試験開始前より若干減少する傾向がみられた。その減少幅は、統計的に有意差は見られなかったが、試験群の方が大きい傾向にあった。(図2)

検査内容②→収縮期血圧(p<0.01)、拡張期血圧(p<0.01)、平均血圧(p<0.01)、脈圧(p<0.05)及び総末梢血管抵抗(p<0.01)は、試験群の方が対照群より有意に低い値を示した。上行大動脈平均血流量は、両群間で差はなかった。(図3)

検査内容③→血漿レニン活性※1、アンギオテンシン変換酵素活性※2、アンギオテンシンⅠ※4及びアンギオテンシンⅡ※5濃度は、両群とも試験開始後には開始前よりも幾分減少傾向にあった。その減少幅は、有意差は見られなかったが、試験群の方が大きかった。(図4)

検査内容④→大動脈病変面積率は、有意ではなかったが、試験群の方が小さい傾向にあった。
(図5)

(注釈)
※1:血漿レニン活性......レニンは腎臓の輸入細動脈の近傍にある傍糸球体装置より、腎血流量の減少や腎還流圧の減少によって血中に分泌される。この酵素の活性が高いと、肝臓で産生されるアンギオテンシノーゲンがより多くアンギオテンシンⅠに変換される。
※2:アンギオテンシン変換酵素活性......アンギオテンシンⅠをアンギオテンシンⅡに変換する酵素の活性で、この酵素は主に肺血管に多く含まれる。高血圧患者ではこの酵素活性が高いことが多い。この酵素活性を抑制するのがアンギオテンシン変換酵素阻害薬で、多くの医療機関で高血圧治療薬として使用されている。
※3:トリグリセライド......グリセロールに3つの脂肪酸がそれぞれエステル結合したもので、別名、中性脂肪とも呼ばれる。小腸から吸収されたばかりのコレステロールは、トリグリセライドやリポ蛋白とともにカイロミクロンという比重の小さい油滴を形成している。
※4:アンギオテンシンⅠ......血漿レニンのはたらきでアンギオテンシノーゲンから産生されたデカペプチド(アミノ酸10個)。このままの形では生理活性はない。
※5:アンギオテンシンⅡ......アンギオテンシン変換酵素のはたらきにより、アンギオテンシンⅠから2つのアミノ酸が取れてオクタペプチド(アミノ酸8個)であるアンギオテンシンⅡがつくられる。アンギオテンシンⅡはアンギオテンシン1(AT1)受容体を介して血管平滑筋に直接的に作用して血管収縮を起こす他、副腎皮質に作用してNaイオンと水の貯留作用を持つアルドステロンというホルモンの分泌を促進する。最近では、アンギオテンシンⅡやアンギオテンシン変換酵素は血中の他、様々な臓器に存在することが示されている。高血圧ではアンギオテンシンⅡの濃度は一般に高い。

図1) 飲水量、体重の変化

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図2) 海洋深層水飲水による総コレステロール、LDLコレステロール、
 過酸化脂質及びトリグリセライド値の変化

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図3)-①収縮期血圧、拡張期血圧および脈圧の比較

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-②平均血圧、上行大動脈血流量及び総末梢血管抵抗の比較

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図4) 試験前後のアンギオテンシンⅠ・Ⅱ、血漿レニン活性、及びアンギオテンシン変換酵素活性(ACE活性)

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図5) 大動脈における硬化病変面積率

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□資料提供:赤穂化成株式会社
・発表日:2004年5月22日
・発表会名:第58回 日本栄養・食糧学会
・発表者:赤穂化成株式会社

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