HOME » 本当にいいの? » 深層水で清酒の吟醸香、美味しさがグレードアップ!? » 深層水で清酒の吟醸香、美味しさがグレードアップ!?

本当にいいの?

チェック

深層水で清酒の吟醸香、美味しさがグレードアップ!?深層水で清酒の吟醸香、美味しさがグレードアップ!?

海洋深層水が清酒発酵中の酵母に与える影響

 室戸海洋深層水が清酒発酵中の酵母に影響を与えていることがアサヒビール株式会社研究グループらにより確認され、海洋深層水利用研究会の論文誌である「海洋深層水研究」において発表されました。

以前より、海洋深層水を発酵中に添加することにより、清酒の香気成分が増加することが知られていましたが、そのメカニズムについては未解明でした。そこで、この現象のメカニズムを解明することを目的とし、海洋深層水を添加して発酵させた時の酵母の遺伝子発現が解析されました。

その結果、海洋深層水の添加により高級アルコールおよび脂肪酸の代謝・生合成に関連する遺伝子の発現が上昇していました。この遺伝子の発現上昇により、清酒の香気成分の生産量が増えると考えらました。また、海洋深層水を添加した清酒で官能試験を行ったところ、NaClや海洋深層水の主要ミネラルのみを添加した清酒よりも、有意に高い総合評価が得られています。これらの研究より海洋深層水の清酒醸造への応用も期待されます。

研究員

佐見 学、杉山 洋、上神 久典、中尾 みか (アサヒビール株式会社)
加藤 麗奈、上東 治彦 (高知県工業技術センター)

研究時期

テーマ 海洋深層水が清酒発行中の酵母に与える影響
研究時期 ~2003年11月

研究方法

 予め麹(こうじ)により白米を糖化させた後、海洋深層水を1%となるように添加することでもろみを調整。このもろみに酵母を接種し発酵を行い、吟醸香を検出。吟醸香生成促進のメカニズムの解明のために、酵母の遺伝子の蒸留水に対する海洋深層水添加における発現比 (海洋深層水を添加した場合の発現量/蒸留水を添加した場合の発現量) を解析。また、吟醸香の生成促進に関与する海洋深層水中の成分を特定するために、海洋深層水に含まれる主要ミネラルであるNa、K、Mg、およびCaの4種について海洋深層水を1%添加した場合の個々のミネラル濃度と同じなるように、各ミネラルを塩化物としてもろみに添加後、発酵試験を実施。さらにミネラルを複数添加した場合の発酵試験を実施。発酵中に海洋深層水ぁるいはNaClを添加した平行複発酵で清酒を醸造し、専門パネリスト (10名) による官能試験をブラインドにて実施。

※官能試験......香味、おいしさ等を評価するために行う試験

研究結果

海洋深層水 (DSW) を添加して発酵させた吟醸香は顕著な増加が観測されています (図1)。この結果より、海洋深層水による醸造香増加において、海洋深層水が酵母へ何らかの影響を与えていることが明らかになりました。


図1 海洋深層水 (DSW) 添加における香気成分の生成

酵母の遺伝子について、蒸留水に対する海洋深層水添加における発現比 (海洋深層水を添加した場合の発現量/蒸留水を添加した場合の発現量) を求めた結果、主にいくらかの脂肪酸およびアミノ酸代謝・生合成に関する遺伝子に関連する遺伝子群において発現の割合が20%を超えていました。このことより、海洋深層水は、脂肪酸およびアミノ酸代謝・生合成に関連する遺伝子群に影響を与えていると考えられています。海洋深層水による、脂肪酸およびアミノ酸代謝・生合成の活性化は脂肪酸やイソアミルアルコールの生成を促すと考えられており、その結果として吟醸香の重要な成分である脂肪酸エステルや高級アルコールエステルの生産量が増加したと考えられています。 主要ミネラルであるNa、K、Mg、およびCaを添加し、発酵試験を実施した結果 (図2) 、吟醸香の生成においてはNa添加群が無添加群に比べ顕著に増加していました。K、Mg、およびCaを添加群においては、ほぼ吟醸香の生成促進は確認されていませんでした。


図2 各種ミネラルの添加が吟醸香生成に及ぼす影響

また、主要ミネラルであるNa、K、Mg、およびCaを組み合わせて添加した発酵試験を実施の結果(図3) では、カプロン酸エチルの生成に与えるNa + Mg + K + (図中ではNMK) の効果が海洋深層水の効果と同じです。しかし、全ての吟醸香成分の生成促進において海洋深層水と同じ効果を持つミネラルの組み合わせが確認されなかったため、主要ミネラルだけで海洋深層水の効果全てを説明することはできないようです。

sake03.jpg
図3 ミネラルを複数添加した時の吟醸香生成比

対照の濃度を1としたときの比を示している (n=2) 。また、N=NaCl、K=KCl、M=MgCl2、そしてC=CaCl2を示している。 官能試験の結果 (図4) 、総合評価がもっとも高かったのが海洋深層水添加群で、以下NaCl添加群、対照の順でした。海洋深層水を添加して発酵させた清酒のおいしさの向上はNa単独では再現できず、海洋深層水に含まれる様々な成分の複合的な働きによることが明らかになりました。

sake04.jpg
図4 官能試験の結果(n=10の平均値)

以上の研究結果より、酒類の発酵中に海洋深層水を使うことで、吟醸香を増加させる効果、発酵中の酵母に与える影響、そしておいしさを向上させる効果があることがわかりました。

提供資料

Deep Ocean Water Research, 5(1), 7-14, 2004 Effects of deep seawater on yeast during "sake"-fermentation

MENU