業務用「海洋深層水ミネラル」が話題に・・・

無機ミネラルの総合メーカー、赤穂化成の業務用「海洋深層水ミネラル」が、健康志向の高まりを受け、売り上げを伸ばしている。

 

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顧客のニーズに合うよう、海洋深層水に含まれるマグネシウムやカルシウム、ナトリウムなどのミネラル分の調整を行い、他社との差別化に成功したことがヒットの要因と、赤穂化成 第二営業部健康業務用グループ 坂井聡課長は語っている。
 
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2011年を基準とすると、東日本大震災に伴う一時的な需要増の反動で2012年度は若干落ち込んだものの、その後は右肩上がりの伸長を継続。2016年度の売上高は前年度比21%増加し、2011年度比では63%の大幅な増加を達成。2017 年度も前年を上回るペースで売上を伸ばし主力商品に成長した。

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◆飲料・食品の機能性強化ならびに品質向上につながる「海洋深層水ミネラル」の魅力や可能性

 

 第二営業部健康業務用グループの坂井聡課長は、海洋深層水のミネラル成分について、得意先の食品・飲料メーカーから 「塩とカルシウムを抜いてください」など細かな注文を受けることが多いそうだ。

 天然・自然にこだわる商品を製造したいメーカー側は、食品添加物の使用を避けたいと考え、そこで、海洋深層水から顧客の要望に応じたミネラルの組成、濃度に調整して納品する。赤穂化成は製塩メーカーとしてのノウハウを生かし、海水からミネラル成分を分離させる技術があり、オーダーメードの海洋深層水ができるのが強み。

 海洋深層水は通常、光合成に必要な太陽の光が届かない水深200メートル以上の深さで水温が急に冷たくなる層にある海水のこと。体内で作ることのできないミネラルを多数含んでおり、現代人に不足しがちなミネラルを補う"海の水"として注目されてきた。

特に食品加工業界ではさまざまな用途に使われる。

海洋深層水ミネラルは、飲料・食品製造の際のミネラル強化や炊飯米製品等の原料として採用されており、飲料メーカーや炊飯米製品メーカーのほか、スーパー・コンビニ向け弁当・総菜ベンダー、冷凍食品メーカーなどへと着実に需要のすそ野を拡げている。

海洋深層水ミネラルの採用した弁当ベンダーでは、弁当のご飯の粒表面が崩れないため、品質をより長く維持できると評価している。冷凍食品メーカーからは、米飯製品をレンジアップした際も水分が細胞内部で保持され、パサつかないとの評価も寄せられている。

海洋深層水を用いてコメを炊くと、ふっくら、つやつや、もちもちのご飯が炊き上がる。これはコメの細胞壁にマグネシウムが付着し、炊飯時に細胞が壊れるのを防ぐ効果があるため。これを生かし、最近はスーパー、コンビニエンスストアの弁当やパックご飯などに用途が広がっている。煮崩れがしにくいという特長を生かし、魚の缶詰製造にも利用されている。

◆栄養成分表示が原則として義務化

 業務用の好調な販売を支えているのは、消費者の「食」に対する安全志向の高まりにある。業務用は主に、食品添加物の代替材としてミネラル強化や炊飯向けとして使われる。通常、ミネラル強化には食品添加物が用いられ、その場合、添加物表示が義務付けられる。海洋深層水のミネラルを使用した場合は天然食品原料100%であり、添加物表示する必要がない。

 ところが15年4月の食品表示法施行に伴い、現在は任意となっている加工食品の添加物などの栄養成分表示が原則として義務化される。業者の準備期間を確保するため義務化は20年からで、「無添加」の表示を重視するメーカーにとって、海洋深層水の需要は今後も高まるばかりだ。

 ちなみに、一般の飲料水などと異なり、業務用では最終製品のラベルに「海洋深層水」とうたうケースはほとんどない。「使用している量が少ない」というのが主な理由で、商品の素材の良さを引き出しながら消費者に知られない、いわば"黒子"のような存在なのだ。

◆オーダーメイドの商品開発


製品開発にあたっては同社の豊富な経験をもとにアドバイスを行うほか、商品化以降も市場情勢を踏まえた仕様修正のサポートなどを行っている。標準荷姿は20リットルBIB(バックインボックス)だが、大型の取っ手付きPETボトルなど同社設備の充填機で対応できる包装形態での製品供給も可能だ(要相談)。同社の海洋深層水関連製品を製造する工場は、総合衛生管理製造過程の承認を受けているほか、食品安全マネジメントシステムの国際規格であるISO22000を取得しており、製造工程における安心・安全の確保でも万全の体制を整えている。

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多様なニーズへの対応を想定し、ミネラル濃度の異なる5種類(硬度50250100020003000)の製品を揃えている。赤穂化成は製塩で培った生産加工技術をノウハウとして蓄積しており、化学物質などを一切使うことなくユーザーの要望に応じたミネラル組成・濃度での製品開発にも対応できるという。

 

機能性強化と品質向上に貢献
このほか健康機能の面からは、ミネラルによる脂質吸収抑制や、腸内フローラ改善などの効果が学術的に認められる部分も出てきており、今後の研究によりさらに健康効果の確認が進むことが期待されている。

 

◆知名度向上が課題

 

 消費者への知名度を高めようと、赤穂化成は海洋深層水の健康効果についてもさまざまな研究を重ねてきた。大学や研究機関との共同研究の結果、免疫機能の増強が期待できるほか、食後の血中の脂質上昇を抑制したり、ピロリ菌の増殖の抑制効果が大きかったりすることなど70件以上が学会で発表されている。坂井さんは「研究で分かった長所を生かした商品を顧客と一緒に考え、共同で特許を取ることもあります」と明かす。

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 かつての海洋深層水の一大ブームを知る坂井さんにとって、現在の消費者からの知名度の低さは不満だ。業務用では引く手あまただが、「店頭で名前を見かけることは少なくなった」と肩を落とす。

 こうした中、行政サイドからも知名度を高めようとする動きが出てきた。赤穂化成は高知県室戸市から海洋深層水の供給を受けているが、高知県は14~16年度に国の補助事業を活用して飲用による健康面での効果を検証。検証結果は、今度の商品開発や商品販売戦略に生かしてもらう。

 同事業の中間報告では、赤穂化成が販売する家庭向けの主力商品「天海(あまみ)の水」の飲用により、腸内の腐敗産物が減り善玉菌が増える傾向があったことが分かった。海洋深層水のブーム再燃のきっかけとなるか注目される。

「海洋深層水ミネラル」とは
海洋深層水は、一般的に太陽光が届かない水深200m以上の水温が急に冷たくなっている層にある海水のことで、陸水や大気由来の化学物質にさらされる機会が少ないため、極めて清浄で安心・安全な原料である。同社の海洋深層水ミネラルは、高知県室戸沖の水深344mから汲み上げられた室戸海洋深層水100%から塩分(NaCl)を取り除き硬度調整したもの。

          2017/9/6 食品と開発 注目原料の最前線レポート

・株式会社産経デジタル「ビジネスのつぼ」 各転載

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