東京大学の伊豆大島海洋深層水研究中に、地元の漁師さんからもたらされた「シーパイン」

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東京大学では、伊豆大島産「シーパイン」という海藻を販売している。
60g540円ほどで、ユニークな見た目とプチプチ食感で、磯の風味も豊かで、醤油などをつけて食べると美味しいらしい。

新宿島屋で毎年開催されている『大学は美味しい!!』というイベントでも販売され、多くの反響があったそうで、フランス料理やイタリア料理のシェフの方たちが興味を持ち、他にも海外向けの食材を扱っている業者さんからも輸出をしたいと話も持ち上がったらしい。

ヘルシー海藻ということで、一部では大きな注目を浴びているシーパインだが、現在、一般に流通しているわけではなく、安価で環境に優しい陸上養殖食品のひとつとして、東大の実験室で作られているだけだ。

この「シーパイン」の名づけ親は、東京大学生物生産工学研究センター寄付研究部門「藻と深層水によるエネルギーと新産業創生」特任准教授、農学博士の倉橋みどりさん。

「シーパインは、伊豆大島の漁師さんから分けていただいたもので、海ぶどうと同じカウレルパ属の一種であることはわかっていますが、種が同定されていないので、まだ正式な種名がついていません。そこで、私が、松(パイン)の葉のような形状をしていることから『シーパイン』と商品名をつけました。 」とのことである。

倉橋さんの研究室では、微細藻類(植物プランクトン)を活用したバイオマスエネルギーと次世代陸上養殖、植物工場、発酵産業を組み合わせ、砂漠に新産業を創世しようとしているが、課題は、そのコストで、多段利用を解決策の一つとしてあげている。

つまり、微細藻類の栄養素(窒素やリンなど)が多い海洋深層水をくみ上げて培養し、微細藻類が増殖した海水を作り、微細藻類は貝類や魚の稚魚のエサになる生物なので、その海水でカキを陸上養殖すればカキのエサ代はかからないということになる。
また、カキは成長中に窒素やリンなどを排出するため、それをそのまま海に流すと海を汚してしまうが、その窒素やリンを海藻類に吸収してもらうことで、処理費用も少なくなり、海水もきれいになる。その海藻類として目をつけたのが3週間ほどで収穫できるほど早く育つシーパイン・・という事なのである。

この「シーパイン」には、更に秘話がある。

東京大学は、つい最近まで、東京都大島町に海洋深層水取水施設を持っていたそうである。ところが、海洋深層水の取水パイプに穴が開き、泣く泣く海洋深層水を諦め、紆余曲折があり、取水施設の管理を引き受けた大島町の漁師さんと共に、引き続き、大島町から、何か発信できないかという事で、「シーパイン」に繋がっているそうである。

東京都の伊豆諸島は,世界でも有数の大都会が目と鼻の先に連なっていながら,自然環境にとても恵まれた土地柄で、そこで、これらの島々を,大消費地へ向けた「健康,安心安全,持続可能社会」の発信基地にしていき、新たな食材として海外からも注目を集めるだけでなく、環境にも優しいシーパインを、その象徴的な商品として押し出していく。こうした研究のひとつひとつが、日本経済を活性化し再生させていくはずである。

 

週刊レイボーイ48号(2014年11月17日発売号より転載)

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